ソシオロジー領域 教授 高橋 良輔

グローバリゼーションは政治と社会をどう変えるのか。

高橋 良輔の写真 ソシオロジー領域 教授 高橋 良輔
青山学院大学大学院国際政治経済学研究科国際政治学専攻5年一貫制博士課程修了。大学院在学中から国際協力NGOセンターに所属し、調査・研究、政策提言などの活動に従事。その後、佐賀大学准教授などを経て現在に至る。冷戦構造が崩壊し、従来の枠組みが崩れ地球規模でグローバル化の進んだ1990年代に、大学院にて国際政治を研究。以降、グローバリゼーションの中で政治と社会がどのように変化するか、また、国際秩序を巡る思想が変わるタイミングで起こりやすい戦争の形などについて関心をもつ。研究範囲は広範囲に及び、現在の研究テーマは政治理論、国際関係思想、政治社会学などと多岐に渡る。

これまでの私の仕事

国際協力NGOセンターで、政府とNGOの交渉現場を経験

高橋 良輔の写真2015年度 NGO・外務省定期協議会「全体会議」(外務省内会議室にて)

私が大学院時代から所属した国際協力NGOセンターは、さまざまな国際協力NGOを支援することを目的とした団体です。ここへは当初、資料整理などのボランティアとして関わったのですが、そのうち外務省とNGOの共同イベントの企画・運営のボランティアに参加するなど、活動の場を広げるようになっていきました。そして、大学院卒業後も活動を続け、主に外務省や内閣府とNGOの交渉の場を作る仕事に従事。さらに、大学の非常勤講師や自衛隊の幹部学校の論文審査員も務めていました。

NGOの活動を続けるうちに研究をやめ、政策提言に専念することも考えましたが、ちょうど2007年の洞爺湖サミットの時期に佐賀大学から話をいただいため、現場を離れて研究に戻ることを決意。現在は、これまでの経験や知識を活かし、地球社会共生の理念に合った人材育成に貢献したいと考え、本学に戻ってきました。同時に、自衛隊の幹部学校の講師や国際協力NGOの理事なども続けており、現場で活動する人たちから得た情報を理論や思想に落とし込み、また本で学んだことを実践の場で実感するという往復作業を通して、研究を深めています。

私の授業はここが面白い

暗記ではなく、学び(道具)を活かし自分で考え判断することを重視

高校までの授業のように、思想家の名前や年号を覚えるといったものではなく、いま世界で起こっている出来事の深層を判断するための道具として、さまざまな考え方(理論、思想)を知ってもらうことを重視しています。また、分析の道具に何を使うか、自分で考えて判断することを求めています。

例えばナショナリズムについて、授業でさまざまな人の理論や思想を一通り説明したあと、愛国主義の光と影がちりばめられた映画を見せることがあります。そして、その映画のなかでどのシーンに私の話したことが象徴的に表れていたと思ったか、また、それを受けて「あなたはナショナリズムに反対ですか、賛成ですか?」といった問いにレポートで応えてもらっています。

このほか、国際協力NGOのスタッフや自衛隊の教官を授業に招いて話を聞いたり、外務省での会議や自衛隊の基地を見学させていただいたりしています。これらの経験を通して生々しい現場のことを知り、そのことが理論ではどのように書かれているか、本に書いてあったことが今、現場でどのように実現しているかを実感し、授業で学んだことの理解を深めてほしいと考えています。

受験生へのメッセージ

何を学びたいのか、まずはそれを知ることが第一歩です。

高橋 良輔の写真一番言いたいことは、自分の半径5mより外の問題に関心をもってくださいということです。スマホで繋がった、実は半径5m以内の人間関係で構築された世界だけに関心をもつのではなく、その外の世界に目を向けてください。テーマはビジネスでも、国際協力でも、戦争でも何でもよく、なぜそういった出来事が起きているのか、それはわたしたちにとって望ましいことなのかについて考えてみてください。大学は、このような自分が関心をもった問題について、自分なりのやり方で研究できる場です。大学とは、何かを教えてもらうというスタンスではなく、自分で何を知りたいのか、何を考えたいのかを明確にし、そのために先生を使うという気持ちをもってこそ活きる場だと思います。

私たちも、学生が自分が興味をもっているものは何なのかがわかっていれば、それに適した道具(学び)を提供することができます。しかし、自分が何に興味をもっているかわからないと言われれば、私たちもどの「道具」を渡していいかわからなくなります。とくに、地球社会共生学部にはさまざまな先生がいるので、「道具」も豊富にあります。それを存分に活かすために、まずは自分と直接関係のない世界の出来事にも目を向け、さまざまなことに関心をもってほしいと思います。